2014年1月13日月曜日

Mecir's Tennis (206) 上半身(特に腕)の力を抜くこと

強いボールを打ちたいとき、振り遅れたスイングを挽回したいときがあります。このようなときには、どうしても強くラケットを振りたい、速くラケットを振りたいと感じるものです。

チャンスボールや甘いボールが来て相手を追い込みたい場合でも、相手のボールが深かったり厳しかったりして追い込まれた場合でも、上半身に力を入れないこと、腕に力を入れずにスイングすることが、メシールのテニスの重要な点の一つです。

王貞治はあれだけのホームランを打った往年の名選手ですが、それほど体格が立派だったわけではありません。その体格は、とても世界で最もホームランを打つ選手には見えませんでした。その王選手が現役時代に受けたインタビューで、こんなことを言っていました。「スイングは力ではない。スイングの力配分は、2→8→2が理想だ。」インパクトの一番力が入るところですら、8割の力で打つわけです。それが、あの体格でもホームランを打ち続けることができた理由の一つだったと思います。

メシールのグランドストロークのフォームは、非常にコンパクトです。特に、(何度も書いていることですが)テイクバックはラケットを持ったまま上体を回転するだけのシンプルでコンパクトなフォームです。利点も多いコンパクトなフォームですが、欠点もあります。たとえば、コンパクトなテイクバックの場合は、スイング全体でタイミングやリズムを取ることが容易ではありません。

たとえば、余裕があるときに強いボールを打つ場合がよくあります。このような場合、一般にはテイクバックを大きくとると思いますが、メシールのようなコンパクトなスイングではあまり大きなテイクバックを取ることができません。(とはいえ、テイクバックが全く変わらないわけではありませんが。)

テイクバックを大きくすることでで力が入りすぎると、テイクバックのスイング軌道が微妙にずれます。スイングが微妙にずれると、薄いグリップのフォアハンドでは、ボールが安定しません。その結果コントロールが乱れ、チャンスボールであるはずが、逆にボールがアウトしたりネットしたりすることがあるのです。

では、強く・速くスイングしたいときにはどうすればよいでしょうか?まず強調したいのは、「そのような場合でも、スイングスピードを変えてはいけない」ということです。しかも、その力は7割~8割程度です。つまるところ、メシールのテニスではフルスイングをしてはいけないのです。

正確に言うと、上体や腕の力でフルスイングをしてはいけません。通常のストロークと違うのは、下半身です。足や腰などです。足については、より正確なポジショニングをします。正確であればあるほど、強くスイングをすることができるからです。そして、腰の回転を速くします。速くといってもフル回転するわけではありません。通常よりも力強く振る程度です。

「下半身を強く使おう」という意識は、それだけで十分です。どこをどう使うと考えずに「下半身を使って強くボールを打とう」と思うだけで十分です。なぜなら、人は無意識に、体勢を崩してまではボールを強く打たないからです。つまり、いくら下半身を強く使おうと思っても、バランスを崩すことは(無意識に)ありません。

このことは、上体とは異なる点です。上体、特に腕を強く振るとスイングが乱れ、ラケット面が微妙にずれます。何度も書きますが、薄いグリップではラケット面のずれは致命傷です。下半身に力を入れても、入れすぎても、ラケット面がずれることはありません。

つまるところ、フラットドライブ系のフォアハンドでは、チャンスボールでは、速い球を打つことを目指すのではなく、より正確に狙った場所にボールを打つことを優先するわけです。

相手に押し込まれてテイクバックが遅れている場合も同じです。スイングを速くすることで挽回しようとしてはなりません。もともとがテイクバックがコンパクトなのですから、多くの場合は挽回は可能です。挽回をする際には、腕に力を入れてスイングスピードを上げるのではなく、テイクバックをよりコンパクトにします。または、どうしても力を入れるのであれば、背筋の力を使います。

しかし、その前に、フットワーク(正確にはステップワーク)やスイング(フォーム)で挽回することを考えます。足を踏み出して打つことは当然できませんので、バックステップを使います。または、バギーホイップなどを使います。これによりスイングの形が少し崩れるのですが、それでも腕の力を変えてはいけません。

全力でボールを打たないというのは、現代テニスの常識からはNGなのかもしれません。しかし、メシールのテニスにおいては、「全力でヒットしない勇気」「7割から8割の力でボールを打つ感覚」が重要となります。フルスイングをしなくてもよいボールを打つことができるということは、ボールと体の位置関係が正しいということでもあります。力が入りやすい位置にボールを持ってこなくては、「脱力のテニス」はできません。

しかし、もし、ボールの位置がずれたとしても、それでも力を入れてはいけないのです。その場合には、スイングを崩して打ちます。本来は望ましくないことですが、多少崩れたとしても、腕などの上半身に力を入れてしまうよりははるかにましです。実際、メシールにビデオを見ていると、実はスイングバランスが崩れていることが頻繁にあります。トッププロであっても、常に100%の位置でボールをヒットできるわけではないのです。

「上体を強く使わない勇気」は、本当に勇気が必要です。しかし、思い出してください。メシールが全力でボールをヒットしている姿を見せたことがあるでしょうか?そのことを信じて、7割、8割の力でボールを打つのです。

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